NAGAI HIROAKI GRAPHIC JAM ZUKŌ ?

永井裕明 図交展
NAGAI HIROAKI GRAPHIC JAM ZUKŌ EXHIBITION
@ggg JUN.6-JUN.30,2014 / @ddd JAN.16-MAR.31,2015

普段、仕事は、まず“何を”伝えるのか?というところからスタートします。しかしこの個展では『図交』という文字を“どう”表現するかに絞って、定着をめざしました。脈略のないさまざまな素材は、さかのぼれば、子供の頃から気になってきたものもありますし、アートディレクターとして活動している現在、興味の対象になっているものもあります。小さい頃から、描いたり、作ったりするのが、好きだったと、あらためて思います。地面にロウセキで絵を描いたり、夜おそくに釘を打ったり、ノコギリを引いたり、思い立ったら抑えられないのは、いまもほとんど変わりません。そう考えると、うまい具合にデザインの仕事ができるようになり、続けていられる自分は、幸せ、ラッキーなのでしょう。少し変わったことがあるとすれば、大人になった分、やや我が強くなりました。さまざまな知識、情報に翻弄されることも多くなりました。展覧会のタイトルに合わせて現在の心境をいえば、図画工作ではなく図我交錯になるのかもしれません。今回の『図交』は、図々しくも、いろいろな方々に協力していただきました。あまり意味を持たせず、でもグッとくるものを作りたい。そんなワガママを、受け止めていただいたみなさま、こころから感謝します。

 

ベーゴマ

下町(旧 下谷万年町、現 北上野)に生まれ育ったので、兄のお古のベーゴマが家に10個くらいはあったと記憶しています。鉛色の荒っぽい物体は、子供には手なずけないような、不思議な魅力を感じていました。今回の企画で、まず図交の文字を刻んでみたいと考えたのは、ベーゴマでした。勝負でぶつかって弾かれる様は、男らしくワイルドです。

Photographer:坂田栄一郎
製作:日三鋳造所

 

フィルム

どうも“好きなものの周辺”が好きなようで、フィルムの4×5や8×10の枠にグッときます。デジタル全盛の今、“周辺”がなにもなくて面白くないですね。好きなものに敬意を払いつつもテープを貼ったり、傷を付けたりして、アナログのマジックを楽しみました。

Photographer:市川勝弘

 

建築模型

以前から建築模型には、興味を持っていました。でも、知り合いの建築家と飲みながら話していくうちに、僕がグッときているのは、建物の部分ではなく等高線の表現なのだと気づき、笑ってしまいました。

Photographer:藤井保
協力:10+2 寺田太作
製作:杉本木工所 杉本孝行

 

雲母(きら)摺り

個展のアイデアを考えていた時期に、不思議な縁で参加して貰うことになりました。和紙と雲母のマッチングはとても美しく、自然の揺らぎのようなものを感じます。見えてないようなものを見たくなる、不思議なアプローチです。

Photographer:佐藤新也
型押し:かみ添 嘉戸浩

 

鉄文字

図交の文字をデザインして、まず思いついたのが鉄の文字です。ずいぶん早い時期から決めていたのですが発注が遅れ、技を使ってもらい、短い期間で素晴らしい年季が入りました。

Photographer:長沢慎一郎
製作:オティカ

 

水槽

水には、本当に敬意を感じていて、何かの形で登場してもらいたいと思っていました。街で見かける水槽も、以前とは様がわりしてまるで、海や池を切り取ってぽんと置いたような感じです。水槽で図を表現しようと考えていた時、実験というアイデアが浮かび、銅板に行き着きました。図の点々は空気の出る石で細かい泡がアクセントです。

Photographer:瀧本幹也
水槽協力:H2
銅板オブジェ製作:オティカ

 

西陣織 (本赤漆・本黒漆)

京都展のために、何か京都らしい作品を追加したいなぁと考えていました。そこでやはり、西陣織で“図交”を表現するのが面白いのではと思い、ある仕事で知り合いになった小谷さんに少々無理を言ってお願いしました。一見、渋い印象ですが、小谷さんのアイディアが詰まった艶っぽい逸品です。

Photographer:金子親一
製作:小谷寿教

 

ベーゴマの房

鋳造所の事務所に見学に行った時に、見つけてしまったのがこの姿です。無理を言って図交オリジナルだけで鋳造して貰いました。高温の砂の中から誕生してくる物体は、たわわに実った葡萄のようでとても魅力的です。

Photographer:藤岡直樹
製作:日三鋳造所 / 河村鋳造所

 

錆びた缶
子供の頃は、まわりに錆びたものがそこら中に溢れていて、特に興味はありませんでしたが、いつの頃からか錆びた物に不思議と魅力を感じるようになりました。今回、錆びた缶を探し始めて、街にはそういう物が殆ど落ちていないことがわかり、海へ向かいました。身近な海からと思い、江ノ島から歩きはじめましたが、錆びた缶などまったくなくて、諦めて帰ろうと思っていた時、急に雰囲気の違う、強いていえばだらしない場所が現れ、年季が入った理想的な缶たちが、ゴロゴロありました。その日は、歩きだったのでそのままにして、後日クルマでそーっと、回収に行きました。

Photographer:操上和美

 

レゴ ブロック
レゴを大人買いして、あらためて形も色も美しいなと思いました。最近お店では、目的に合わせた、精度の高いプラモデルのようなタイプが多く、何だかレゴっぽくないなぁと感じていたので、今回のたいしたものじゃないものを作るのは原点という感じがしました。

Photographer:金子親一

 

踊るベーゴマ (映像)
ベーゴマの伝道師、N島氏の手にかかると息を吹き込まれたように、力強く廻る図と交。一勝負の間に鋳造所の男らしいシーンをインサートしました。

Photographer:市川勝弘
Editor:山本佳生

 

角砂糖(映像)
これは、予想外の素材で、打ち合わせをしているうちに、何でもないものがいいということになったと記憶しています。近頃、角砂糖にはほとんど縁がなくて、改めてながめてみたら、妙な造形美を感じました。当初、動画的なアプローチは考えていなかったけれど、そんな展開もJAMセッションならではだと思います。

Photographer:羽金和恭
音楽:パーカッショニスト 梯郁夫

 

活版組版
活版の印刷物はとてもグッときます。もちろん文字は美しいのですが、それ以外の罫や下駄と呼ばれる活字の裏側などもたまらない魅力です。今回は図と交を無理いって、罫と下駄だけで組んでもらいました。

Typesetting:高田唯
組版:オールライトプリンティング 高田唯

 

リサイクル
印刷の立ち会いで、必ず目にするのは“ヤレ”といわれる、色々な画像やら色面やら文字などが刷り重なった、アート作品のような捨てられてしまう紙たちです。“ヤレ”にグッとくるデザイナーは少なくないでしょう。今回は、意図的に“ヤレ的な”ものを作ってみたいと思い、過去に作った印刷物や素材としてストックしているものたちを選び、図と交をシルク印刷で上から刷ってもらいました。

Designer:永井裕明

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