ステンシルにはまる

和歌山のお土産本というConceptでつくりはじめ、「紀ノ国屋(本)左衛門」というタイトルが藤原大作氏から出てきた時に、“これは、やっぱりステンシルだな”と思った。それも、昔ながらのザラザラの木箱に(紀)とか入っているヤツである。これは現地で作るしかないと、和歌山のみかん農家に行ってみるが、今は木箱ではなく段ボールになってしまい作ることがないらしい。気をとりなおし東京に戻り、ステンシル製作の泉マーク商会という店を捜し出した。数週間たって上がってきたものは、文字の切り方が想像と違っていてとても面白い。丁寧に紙に写し取り、本の表紙と駅貼りポスターに強く濃く表現した。このステンシルの饒舌さで、和歌山県の持っている“におい”が表現出来たと思った。

山崎の雑誌広告の際には、京都の工場取材の最中にひらめき、少々無理を言って実際の樽に印字するステンシル(たしか特殊な紙だったと思う)を使って、紙に印字してもらったものを画面に散らしてみた。

ミロの時は、日本がどこにあるかも知らないスペインのおやじが、作品を送る木の箱にカタカナを真似して作ったステンシルでスプレーでプシュッとやった感じを表現した。

まだある。金子親一氏の写真集TORSOである。本全体の雰囲気を服作りで使うトルソーぽくしたくて、アルファベットとか数字とかがステンシルで印字されている様を再現した。

昔からステンシルはあったし見てもいたが、タクシーとかにプシュッと印字されはみ出しているのは、精度が低くイマイチ好きではなかった。それが今は、この曖昧さにグッとくるのは何故だろう。

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